ショートストーリー/これがDXの現実なのか!①

ショートストーリー/これがDXの現実なのか!①

第1話/社長からの突然の命令

「今後の営業戦略を考える上で参考になるシステムを作ってほしい」。かねてからDX導入に前向きな姿勢を見せていた社長のこの一言が、全ての始まりだった。

地方の中小企業に勤める総務兼経理担当のAさんは、表計算ソフトの運用に明るいということから、営業部門の業績システム管理の一切を任されていた。今回の社長からの申し出は、そんなAさんの能力をかわれてのものだった。

翌日から、Aさんは依頼されたシステムづくりのための作業を開始した。

Aさんが考えたプランの中身は、

  1. これまでの担当者毎の売上高の記録に加え、今後の業績の見込、顧客毎の売上や利益を明らかにする。
  2. どこに売上アップの要素があるのか、営業活動で何により力を注ぐべきかを把握できるよう、データやグラフを駆使し、今後の見通しや分析ができる仕組みをつくる

というものだった。

普段の仕事をしながらのシステムづくりは、当初考えていた以上に大変なものだった。休日を返上し、システムづくりに取り組んだAさんがようやく新たなシステムの運用方法と管理の仕組みを完成させたのは、社長から依頼を受けた約3か月後のことだった。

満を持して作り上げたAさんの営業システムならびに顧客管理のシステムは社長の期待を上回るほどの仕上がりで、役員を前にしたプレゼンでも高い評価を得ることとなった。

新システムの導入は、試験運用を経た1か月後に決まった。