DXを阻むもの② /越えなければいけいない「現状維持バイアス」という壁

DXを阻むもの② /越えなければいけいない「現状維持バイアス」という壁

「DXが、事業を飛躍させ、圧倒的な競争優位性をもたらしてくれるカギを握っている」ということに異論をはさむ経営者はほとんどいないでしょう。すぐには難しいが、いずれ自社でもDXに向けた取り組みをスタートしたいと、既に動き出している企業も少なくないはずです。

ただDXを進めるには、どうしても超えなければいけない高い壁が存在します。

それは「現状維持バイアス」(「知らないことや経験したことがないことを受け入れたくない」という心理的傾向)という壁です。

あらゆる企業に、いわゆる鉄板ともいうべきビジネスモデルが存在します。それは長い時間をかけ磨き上げられたスキルやノウハウによって支えられ、企業に、確かな成果をもたらす源ともいえるものです。しかも、それは長年の間に組織の風土や習慣、価値観として深く根付き、現場で働く従業員にとっても、効率的に成果を出すための一番慣れた方法として、このビジネスモデルは、深く定着しています。

もしDXを取り入れるために、こうした企業文化とも言うべきビジネスモデルを見直す必要が生じた時、組織やそこで働く社員の間から、この「現状維持バイアス」が大きな壁として現れることになります。

DX実現の3段階のうち、デジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタルデータ化)とデジタライゼーション(個別の業務・製造プロセスのデジタル化)は、いわば既存業務の改善を目的とした段階です。それは多くの場合、事業規模や体力に応じたデジタル投資により実現が可能です。しかし、最終段階のデジタルトランスフォーメーションでは、事業やビジネスモデルの変革がその目標となることから、現状の組織のあり方を見直すために、この「現状維持バイアス」と向き合わざるを得ません。

多くの企業がデジタイゼーション、デジタライゼーションの段階でとどまっている理由は、まさにここにあると言えます。

「利益をもたらしてくれた既存のビジネスモデルに捕らわれることなく、時代の変革期に、大きな成長のチャンスをつかむために新たな仕組みづくりに挑む」。

DXは、私たちにそうした勇気ある一歩を踏み出すことを求めているのかもしれません。