「わが社はDXどころか、デジタル化すらほとんど進んでいない。そんな状況でDXはとても無理」そんな経営者の声を時々耳にします。
はっきり申し上げます。DXとデジタル化は似て非なるもので、もっと言えば、デジタル化が進んでいないからといって、DXをあきらめる必要はまったくありません。
もちろん社内業務がデジタル化され、IT化が進んでいる企業は、DXを進める上で大変有利な環境にあるといえます。
ただ環境を整備して、IT専門のスタッフを揃えたとしても、DXが実現できるとは言い切れません。
その証拠に、多くの企業は、DXではなく、いわゆる省力化や迅速化、効率化を目的としたデジタイゼーション(アナログ・物理データの単純なデジタルデータ)もしくはデジタライゼーション(個別業務・プロセスのデジタル化)の段階でとどまったままです。
ではDXを進めるために、デジタル環境以外で必要なことはなんでしょうか。
いつのまにか、業務改善・効率化が経営の中心に
企業を発展させ、利益を拡大させるため、経営者は、業務改善と効率化に日々力を注ぎます。そうした取り組みが一定の成果を上げることで、経営者は、事業を前進させているという実感を得、結果、普段の仕事の中で次第に多くの時間を割くようになります。収益性を高め、ひいては事業発展にもつながる「良」といえるこうした取り組みが、企業経営で大きなウェイトを占めるようになります。先に上げたいわゆるデジタイゼーション、デジタライゼーションがカバーする領域の内容です。
ただ、DXはそうした改善やスピードアップだけで実現できるものではありません。むしろそれまでの事業のあり方に疑いを向け、新たな可能性を探り出そうとする態度が必要とされます。
日々繰り返される「良」の取り組みに、「最良」の取り組みが埋もれてしまわないよう、常に目指すべきものを明らかにし、最優先事項とは何かについてじっくり考える時間を持つことが、DXを進めるためになにより大切なことだと言えます。